めぐりたびのススメ(仮)vol.3 情熱の畳職人、大島一行さん

第3回目となる、めぐりたびのススメ(仮)。今回は芦野が誇る畳職人、大島一行さん。
大島畳工業では、国産のい草にこだわった畳づくりをしています。
普段、あまり触れることのない国産畳のアツい世界をご一緒に!
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〜畳職人への道〜
アサミ(以下、ア):このお店の歴史から教えてください。
大島さん(以下、大):歴史は、大正10年くらい、1921年に曾じいちゃんからはじまって、じいちゃん、おやじ、オレで4代目。90年くらいかな。(隣接してる)美容室の方が古いんだよ。ウチの母ちゃんで4代目。嫁さんで5代目。もしかするとその前からやってたかもしれないね、髪結いの時代から。曾じいちゃんがお婿さんに来て、それから畳屋さんがはじまったらしい。
ア:曾お爺さんのお家がもともと畳屋さんで?
大:もともとというか、どこかで畳屋さんをやってたのかな。それでこっちにきて、畳屋さんを始めたらしい。だいたいそれを計算すると、大正10年くらいじゃねえかと。
ア:もう最初から畳屋さんを継ぐつもりだったんですか?
大:あー、そうだね。とりあえずやろうとは思っていた。
 ア:じゃあ別なお仕事はしたりせずに?
大:してないしてない。もう18で高校終わってから、畳の訓練所に入って。訓練所は茨城県の高萩市にあるのね。2年間住み込みで、寮があって、そこに缶詰め状態で。自分らのときは同期が10人入ったんだけど、結局8人になっちゃったんだよね。辞めちゃう人が多いから。
ア:厳しいんですね・・・ 
大:1年生と2年生なんだけど、特に2年生が教えてくれるような感じ。先生もいるんだけど、ある程度細かい作業なんかは先輩から教わるの。結構そこで厳しさっていうか、体育会系のね(笑)そこで2年間過ごして、まっすぐ帰ってきて、(家を継いで)やってる。
ア:だいたい皆さん、高校卒業してから入るんですか?
大:ううん。中卒とか、あと大卒もいる。ただ、大卒のひとは結構辞めちゃう人が多くて。中卒の人が2年生になると、大卒の人は中卒の年下に教わるから、そういう抵抗もあるし。業界の上下関係に年齢は関係ないから。そういうわけで、うちらのときも大卒の人来たけどやめちゃって。でも大体高卒が多いかな。
ア:・・・怖くなかったですか?
大:どういう学校かわからなくて行くからね。入った瞬間に、あ、ヤバい!と思った。
ア:あははは。
大:でも入っちゃえばね。慣れれば大丈夫。 学校は基本的に手縫いを勉強するところで、あとは町の畳工事も請け負って、生徒があげにいって、生徒が仕上げて、生徒が敷く。町を練習台みたいにやってるわけだね。いま生徒が少なくなっちゃってさ、震災後は入校生ゼロだったの。でもその後また徐々に増えてきて、今は女の子が一人入ってる。
ア:女の子は初めてですか?
大:初めて。うちらのときも入りたいって子がいたんだけど、やっぱり女の子じゃダメだろうって、結局断っちゃったらしい。今いる子は実家が畳屋さんやってて、女兄弟で後継者がいない。で私がやるって、男の人と一緒にさ、やってんだよ。でもやっぱり腰痛めてるって。背もちっちゃくてさ、細いんだよ。それで35キロくらいの畳普通に持ってるから。あれを毎日持つっていうのは、男の人だって大変だよ。
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〜国産畳を守りたい 畳職人たちの想い〜
ア:畳屋さんの通常のお仕事って、どんなことをするんですか?
大:基本的に畳の材料は全部買うのね、ウチは。い草でしょ、畳の床っていわゆる藁床の部分、あと縁とか糸とか、全部仕入れて。それで部屋の寸法を採寸して、畳にして納めるのが仕事。その前の段階に、い草を作る農家さんがいたりとか、床作る専門業者さんがいたりするんだよね。
ア:ここでは国産のい草で作られた畳表を扱っていますよね。
大:い草農家さんは平成元年に6000軒あったのが、平成25年で576軒まで減って、600軒切っちゃったんだよね。今の状況だと後継者がいない。畳表は市場に持っていって入札するんだけど、そうするとどうしても安くなっちゃう。安くなっちゃうと、結局農家さんは大変。
ア:国産は貴重ってことですか?
大:うん、少なくなってきてるから。でも、この入札価格っていうのは変動しちゃうから、いいときもあれば悪いときもある。ずっとよければいんだけど、それをなくそうと思ってオレらが取り組んでるのは、問屋さんを通さずに農家さんから直接買うこと。それでその分の対価を農家さんに直接払おうっていう。

大島さんは『畳屋道場』という全国の畳屋さんの組合に参加し、国産畳を守る活動を続けています。畳職人がい草の産地(熊本県八代市)に出向き、生産者と畳職人が顔の見えるお付き合いをしています。(写真は熊本での産地研修の様子)

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ア:そもそも、どうしてい草は安いものになってしまったんですか?
 大:農家さんが6000軒あったときは、中国産てなかったわけ。それで中国産は人件費が安い。品質も同じだろうみたいな話になって、日本の畳屋さんも安いのを使い始めちゃったわけ。で、安くないと売れないから、国産のい草もどんどん料金が下がっていって。い草作るよりはトマトとか、いろんな野菜を作る方が利益になるって、みんな辞めてったの。今残ってる人たちは、い草が好きで、こだわりもってやってる人たちだね。50代、60代の人は死ぬまでやるって言ってくれてる。だけど息子たちにはやらせらんねぇって。その辺をどうにかしていかないと減る一方じゃん。畳屋さんが多くなれば、自分たちで会社を作って、農業法人みたいなものを作ろうかって話もしてるんだけど、畳屋さんのネットワークがまだ少ないからね。
ア:理解ある畳屋さんが増えればいいですよね。
大:そう。畳屋さんの意識がもう低い。低いっていうか、中国産でもいいやって言ってる人たちが多いと思う。畳屋さんまわってみればわかると思うけど、少ないよね、国産て。問屋さんにもすくなくて、売れないからおかないって。ようはそこまで畳屋さんの意識が中国産でいいや、国産は高いからってなってる。でもお客さん的には国産のほうが絶対いいじゃん?
ア:産地を表示する義務みたいなものはないんですか?
大:今のところはない。そういう法律ができたら、今度はやっぱり国産がいいんだって畳屋さんも多くなる。でもコッチ向いた時にはすでに買えなくなってる状態。産地としてはいいことなんだろうけど。うち(畳屋道場)は組合を作ってるから、間違いなく農家さんからちゃんとしたものを買えるんだけど、よその畳屋さんは良質なものが買えなくなる。今後、明確に分かれていくんじゃないかな。今まで結構投資してグループを作ってきたけど、その辺で差が出てくると思う。
写真左:中国産 中央、右:国産。
写真ではわかりにくいのですが、中国産のい草は均一でなく、色むらや筋が入っています。畳の目の細かさも、触り心地も全然違います。
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ア:いいものがほしいっていうお客さんも多いと思うんですけどね。
 大:結局今って、和室6畳しかないじゃん。その6畳を一番安いのをいれるのか、いいのをいれるのか。お客さんにきくと、やっぱりいいのをいれたいっていうんだよね。逆に30畳から40畳もある人はなかなかいいの入れられないっていうのもあるけど、一部屋だったらいいのをつけたいなって。中国産と比べて、国産の値段は1.5〜2倍。ものによっては3倍もするのもある。お客さんは、説明されると国産を使いたくなるっていうのがあるんだろうけど、畳屋さんが説明できてないんだろうね。畳屋さんも知らない。国産の良さっていうのを。
 
〜畳屋道場×和たたみの里八代 産地での新しい取組み〜
ア:畳屋道場の皆さんは、熊本で主にどんな活動をされてるんですか?
 大:基本的にい草の植え付けでしょ。植え付けが11月にあって、刈り取りが7月。で、品評会が10月にある。2月に畳を奉納しようっていうイベントが去年からはじまって、去年は国宝の青井阿蘇神社。地元の人の交流があって、やらせていただけることになった。今年は熊本市内にある本妙寺っていうお寺。加藤清政って熊本城をを作った武将が眠ってるお寺の、本堂の畳替えを35枚を奉納することができた。
 ア:畳屋道場のメンバーは何人くらいですか?
大:えっとね、12人。北は岩手、南は屋久島。危機感を持っている人たちが集まって、このままじゃまずいからなんかしようよって、実際に産地に行ったり、いろいろやってる。
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ア:熊本のい草のシェアは95%とのことですが、それほど熊本は適した気候なんですか?
 大:そう、いちばんね。暑くて、湿度が高い。人間としても、ほんとに住みづらい!
ア:あははは。
大:行くとわかるけど、夏の刈り取り時期なんか夜中から暑いんだから。ムシムシしてて。昔、熊本の人なんかは「いきるか死ぬか」って言われてて。「いきる」っていうのは、い草を切るっていう意味ね。い草を切るか、死ぬかって言われるくらい大変な作業だった。昔からその言葉はあるんだって。
ア:へぇぇ!刈り取りの時期が一番キツいってことですか?
大:そうそう。3週間、期間が決まってるんだ。ここで刈らないと草がだめになっちゃう。だから朝から夕方までしっかり作業して、雨の日も関係なく。みんな夕方は7時か8時頃寝ちゃって、2時くらいに起きて。それを3週間やってるわけ。農家さんによっては遅い人は5時とか。オレ行ったのは3時だったり、4時半だったり。農家さんによって違う。
 ア:夜中から刈るんですか?
大:うん、電気つけて刈る。刈り取りして、泥染めして、乾燥機に入れるのを順番にやらないといけない。それを一つでもタイミングずらすと草が死んじゃう。それから乾燥釜から出して袋詰めする、釜だしって言う作業をして、屋根裏に並べていく。その繰り返し。
ア:なるほどー。農家さんも畳屋さんみたいに、グループを作っているんですか?
大:うん。『和たたみの里八代』っていう生産組合(写真下)。この中のどこかにホームステイして、刈り取りとか手伝う。

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大:オレたちは基本的にここの農家さんから買うの。この人たちは腕のいい農家さん。なぜなら農協の人が選んでくれた農家さんだから。この中でも今年でい草作りやめるって言ってる人もいるし。やっぱり大変だし、きついんだよね。いろいろやっぱりあるんだけど、農家さんたちも若い人たちをどんどん入れていこうって話してる。いかんせんうちらのメンバーが増えていかないと。目標は全量買いしたいからね。

ア:若手でい草作りしようって人はいないんですか?
大:ホームステイでお世話になった石橋さんちの息子さんは、やるって言ってくれてる。他は・・・跡継ぐ人は少ないのが現状だね。
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〜未来へつなぐ国産畳〜
ア:今後の大島畳工業については、どんなことをやっていこうと考えていますか?
大:目標?つぶれないようにやってくことかな。
 ア:あははは。
大:別に大きくしようとかさ、そんなことは考えてなくて。要は農家さんと、うちら(畳屋さん)と、お客さんがこう、ストレートに繋がってさ、わかってもらえるような形のほうがいい。お客さんが農家さんにお手紙書く場合もあんだよ。そうすると農家さんは喜んでもらえるし、そんなの今までなかった。今まではうちと農家さんも繋がりがなかったから、逆に農家さんも新鮮なんじゃないかな。ましてや、つくった表がよくてお客さんから手紙来たりさ、電話来たりさ、喜ぶよね。そういった流通を長く続けて、産地を盛り上げていきたい。自分ちは別に、食えればいいっていうかさ。産地の物を使って、お客さんにちゃんとした畳を使ってもらいたいっていうのがいちばんかな。
 
国産畳によって生まれる、モノだけではない、人のつながり。
日本の伝統文化を大切に守り、次の世代に受け継いでいくために、尽力している職人たち。
お話を聞くだけでも、私ももっと頑張らなきゃって気分になりました!
大島さん、お忙しい中、気さくに応対していただき、本当にありがとうございました。
 
みなさんも芦野の情熱の畳職人に、ぜひ会いにきてくださいね☆
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畳屋道場メンバーの取組みや、い草ができるまで、国産畳を取り巻く現状などは、『畳屋道場』のサイトからご覧いただけます。
こちらも大変興味深い内容で、へぇぇぇと唸ること間違いなしですよ!
 
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大島畳工業
1921年創業 一級技能士店
いぐさ農家と共に作る・生産者の顔が見える・安心安全のJAブランドを使用
TEL:0287-74-0017
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